【バレエ】 キエフ・クラシック・バレエ 「チャイコフスキー夢の3大バレエ〜名場面集」(24日)

6月29日から、表題バレエ団の日本巡業が始まった。

https://www.impres-tokyo.com/kiev-classic-ballet

9月24日までほぼ3カ月滞在し、九州〜関東間を駆け巡る。

公演数はマチソワ46日(!)を含む計123公演。(!!)

...以前紹介した時より、むちゃくちゃ増えてないか?

このバレエ団は、ウクライナの首都キーウ(キエフ)市の,

市立アカデミー青少年オペラ・バレエ劇場に付属するバレエ団で、

ウクライナの国立バレエ団である、

シェフチェンコキエフ・バレエ)とも関わりがある。

いつごろから日本を訪れるようになったのかは、

資料を掘らないとわからないが、

光藍社とミハイロフスキーの蜜月関係が終焉すると、

同社はその後釜候補のひとつとして目を付けたことから、

近年目にする機会が増えた。

ただしミハイロフスキーと比べると実力は明らかに劣るため、

同社はシェフチェンコに焦点を定めたようで、

2年振りの来日となる今回のプロモーターは、

昨年1月に設立されたばかりの新会社、インプレサリオ東京となった。

国際テロ組織にも内部には過激派と穏健派がいて、

考え方の違いから分裂するのはよくある話だが、

上述のスケジュールを知った時は、この新会社、

光藍社の過激派グループが独立したのかと思った。(笑)

それにしても、営業陣の手腕を褒めるべきか、

ここまでしなければならないほど、

ウクライナの国内情勢は深刻な状況にあると憂うべきか、

どちらなのだろう。

公演内容は2部構成で、

第1部は「くるみ」と「白鳥」からの抜粋。

ただし「くるみ」は花ワルと主役のアダージョ

ラストの顔見せのみなので、10分ほどしかない。

その代わり続く「白鳥」は、ロットバルトの登場から始まる、

群舞付き1幕2場ほぼすべてなので、合わせると45分くらいになる。

第2部は「眠り」からの抜粋で、

1幕のワルツとローズ・アダージョの前後、

3幕の入場場面(ただし青い鳥と猫のみ)、

そのキャラダン2組のヴァリ、つなぎにリラ精が少しだけ踊り、

〆に主役のGPDD。

1部2部合わせて40分弱だから、

休憩20分を挟んでも、公演時間は2時間を切る。

各会場共通と思われるプログラムに他の演目紹介はないので、

踊り手を適宜交代しながら、これを上演し続けるようだ。

上述のようにキャラクテールの数は少なく、

「白鳥」の群舞はさすがに16人いたが、

「眠り」では王子たちが小姓代わりに肩を貸すなどして、

出演者の頭数を減らしており、本国から交代要員も来るだろうから、

日常のトレーニングの範疇に近いこの内容なら、

(注:ウクライナ/ロシアの話です)

なんとか回していける、ということなのだろう。

気になるのは、ポスターのメインを飾るグバノワさん。

来日メンバーの主要女性リストには、彼女を含むプリンシパル3名と、

ゲスト・ソリスト1名の名前があるので、

頭数的には厳しいなりに対応できそうだが、

ここまで彼女を前に出してPRしてしまうと、

いくら知名度が低いとはいえ、期待して観に来る人もいるはずだから、

彼女だけは毎回登板しなければならなくなる。

3ヶ月もツアーが続くと体調を崩す人も当然出てくるはずで、

バレエ団側としてもリスク・マネージメントは考えているだろうが、

ここまでハードなスケジュールだと、部外者ながら心配になってくる。

○「くるみ割り人形

  クララ:クリスティーナ・カダセヴィチ

  王子:アナトリー・ハンダジェフスキー

カダセヴィチさんは、

ハリコフ市の国立劇場付きバレエ団のプリンシパルで、

ここの舞台にもよく立っているらしい。

相方のハンダジェフスキーさんも同劇場のプリンシパルだから、

普段から一緒に踊っているのだろう。

長丁場ということで流していたと思われるが、

風貌、スタイルといった見た目から、踊りの技術まで、

悪いところはないが、かと言って印象に残るものもなかった。

○「白鳥の湖

  オデット:ヤーナ・グバノワ

  ジークフリート:イワン・コズロフ

  ロットバルト:フセヴォロド・マイエフスキー

グバノワさんは今回のバレエ団イチオシ・ダンサー。

チラシを見た人は「古風な美人」という印象を持ったと思うが、

実物はもう少し今風の顔立ち。

2011年卒業とあるから、まだ20代前半。

フォトショでいじり過ぎなんじゃないか。(笑)

見た目についてもう少し記すと、

手足の長さは特に長いわけではなく、

にもかかわらず筋肉を付けすぎてしまったのか、

全体に厚みのある印象で、中でも太ももがしっかりしているため、

チュチュがあまり似合わない。

シェフチェンコのシャイタノワさんほどではないが、

彼女を少し細くした感じ。

ビジュアル重視の人にはお薦めしにくい踊り手だが、

その流水をスローシャッターで撮影したような、

自然で滑らかな動きの踊りには、ちょっと惚れた。(笑)

ぎくしゃく感やパが途切れるようなことは一切なく、

常に手足の残像が見えている、とても美しい踊りをする。

加えて表現も豊かな人のようで、

「白鳥」の1幕2場はつい無表情、淡泊になりがちだが、

わずかな視線の変化と踊りの強弱から、

オデットの心情がしっかり伝わってくる。

どの演目でも構わないから、彼女の全幕を観てみたい。

一方、相方のクズロフさんは2000年卒のベテランで、

エイフマンやワシントンのバレエ団に籍を置いたりと、

多彩な経歴を持つ。今回は見せ場がなかったが、

リファールやモスクワのバレコンでの入賞経験もあるという。

彼もまた感情表現が豊かなので、

グバノワさんとのマッチングも申し分なかった。

ちなみに見た目は、顔も体形も「キャッスル」に似ている。(笑)

ロットバルトのマイエフスキーさんは、

メンバー・リストに名前があるだけのソリストだが、

印象的な踊り手だった。

跳躍や回転は、やや細身の体らしい軽快な動きだが、

周囲を睥睨し、王子を威嚇する時は、

体型以上の押し出しと迫力がある。

彼もまた、もっといろいろ見てみたいダンサーだ。

○「眠れる森の美女」

  オーロラ:長澤美絵

  デジレ:二山治雄

長澤さんは、初めて観た時から、贔屓リストに入れた人。

2005年ワガノワ卒とあるから30前後と思われるが、

都さんタイプの人なので、可愛らしい役がよく似合う。

スタイルは一世代前なので、

首や手足の長いダンサーか好みの人には勧められないが、

とにかく笑顔がキュートで、オーロラやクララなど、

幼いイメージの役はぴったり。ジュリエットも似合いそうだ。

溌剌とした演技ができるなら、キトリやスワニルダもいけそう。

速いテンポの演奏にも平然と追随し、

小気味よい動きと優雅な仕草を両立させる、

レベルの高い踊り手だ。

相方はゲスト・ソリストの二山くん。

ご存知のとおり、2014年のローザンヌ・ウィナーだ。

サンフランシスコ留学を経て、ワシントン・バレエに籍を置き、

今はパリオペとも短期契約を結んでいるという。

2人とも単独で踊ると見応えあるが、

PDDになると、とたんに精彩を欠く。

二山くんの経験値を考えれば仕方のないことで、

このバレエ団自体、まだ日本では認知度が低いのだから、

長澤さんは彼女の良さを引き出せる相手と組ませ、

二山くんにはソロの演目を用意すべきだった。

他のソリストは、特筆するほどではないが、

かと言って悪いわけでもなく、

若手なら将来に期待、といった感じ。

猫たちの演技はタイミングがいまひとつだったが、

白猫ストウスレンコさんの表情の変化は面白かった。

リラ精と大白鳥は、たしかにみな背が高いが大味。

群舞は、足音は静かな方で、直線と曲線の混在する動きは、

振付が原因かもしれない。あるいは先生のクセか。

ビジュアルはウクライナのバレエ団だけあって、

ザハロワさんやニーナさんに似た人もいるなど、

美人の含有率は高いが、シェフチェンコほどではない。

ビジュアルで思い出したが、

割り箸どころか針金みたいな人がいて、

しかも配役は衣装の露出度が高い「くるみ」のアラビア。

どのような踊りをするのか、逆に観てみたい気がする。

チケット代は、自治体の補助金の差なのか、

S席5000円以下ではあるがまちまちで、

私の観た24日は4000円を切っていた。

舞台装置と衣装は新制作したらしいが、

幕を主体としたものだから豪華とは言えず、

ダンサーのパフォーマンスも上述の通りなので、

お得感はさほどないが、

ビストロのコース・ランチというか、

本場のバレエを気軽に楽しむには、

うってつけの公演といえる。

来日早々では、時差ボケや、

湿度の高い日本の気候に体が慣れていないだろうし、

かと言って遅すぎるとへばっているだろうからと、

このタイミングで観てみたが、上記の内容からすると、

ピークはもう少し先のようだ。

清里のフィールド・バレエも、2週間ほぼ毎日、舞台が続くが、

ある年、1週間後にもう一度観に行ったところ、

群舞が別人と思えるほど上達していた。

バレエの本場で育ったダンサーたちが、

短期間に三桁の公演をこなしたら、どう変わるのだろう。

少し間を置いて、もう一度観てみるか。(笑)